【珍品:其の1 『生人形』】

2004-09-16

 今回は本ではなく物を。珍品。
 今、巷で大ブレーク『生人形』を、紹介します。


 ちなみに、生人形と書いて「いきにんぎょう」と読みます。「活人形」と書かれることもあります。

 現在、大阪の歴史博物館で「生人形と松本喜三郎」展が開催されています。関西圏人は必ず要チェキラ。
(ちなみにチェキラはcheck it outのカタカナ読みだとか。じゃあ「チェキラッチョ」の「チョ」は何ですかね…「要・check it out・躇」。HIP・HOPしながらも躊躇する、仄かな羞恥心。正式な答え知ってる人いたら教えて下さい)

 生人形とは、幕末から明治にかけて、大阪や江戸などの見世物興行に出された細工物のひとつで、まるで生きているかのような人形のことです。
 当時の主な人形師には「松本喜三郎」「安本亀八」「江島栄次郎」なんかがいます。
 他の作家の作品なども見ましたが、やはり松本喜三郎安本亀八が「ナマ」ということに関しては、頭ひとつ抜けてました。
 是非ともこれはナマで見て欲しい。静脈が浮き出た腕の作り物などは、本物の腕よりも「ナマっぽさ」「シズル感」を感じます。
 想像の余地を許さない、そんな気概が直接伝わってきますです。

 生人形も凄かったんですが、個人的に面白いなと思ったのは、
 同じく出品されていた『須弥山儀視実等象儀』


 これ、生人形師の松本喜三郎が本体を作り、
 機械部分を稀代のからくり師【からくり儀右衛門】こと、田中久重が作ってるらしいです。
 田中久重といえば、万年時計に弓弾き童子を作った日本最高のからくり師。
 東芝の前身、芝浦製作所を創設した企業人でもあります。
 この人の作ったからくり時計『万年自鳴鐘』は、血圧上がります。
 で、これがどういう物かと言うと、
 仏教哲学に基づく天動説を立体化した物らしいです。ブラボー。
 考案者は、『ランプ亡国論』の学僧、佐田介石らしいです。
 この坊さん、西洋から地動説が入ってくると、須弥山論を展開して独自の天動説を守ろうとしたらしい。どんな時代でも、イカした電波野郎がいるもんです。
<(前略)なかでも最も戦闘的な開化嫌いは国粋派の僧侶・介石で,須弥山説をもって天道説を唱えたり,ランプ亡国論,簿記印記(インキ)無用論などを唱え,独自の経済論に基づく舶来品排斥運動を起こした.>
http://www.iwanami.co.jp/moreinfo/2402010/geppou.htmlより抜粋>
 調べてみると、龍谷大学に、別モデルの須弥山儀が存在するようだ。
 制作者はまたしても田中久重。しかもこれ、未だに動いている模様。

 下界を見下し、今日も今日とて須弥山は動く。
 天空界は今日も晴天。