【珍書:其の15 『ZERRO ゼロ』】

2005-02-11

 
『ZERRO ゼロ』松田行正・著 牛若丸出版
 去年、無駄遣いした本です。
(ちなみに、今年は収入源が無いので、1冊2000円以上する本は買えません)

 ミステリ小説っぽいタイトルですが、実は、「形が面白い文字・記号・暗号・符号」を、121項目・280頁に渡って紹介している本なんです。
 掲載されてある文字・記号の一例を挙げると……

モールス記号・テレックス暗号・点字・二進法・ピットマン式速記術・カイネジクス・ベルベル文字・約物ネストリウス派文字・ヘブライ文字・さえずりシラブル・黄金虫暗号・女王メアリー暗号・野球のスコア記号・チェス棋譜記号・数学符号・ヌミディア文字・宇宙文字・ラバノーテーション・電気記号・医学記号・錬金術記号・稲留正吉の新日本記号・クリー文字・ブギス文字・サーブリック・錬金術暗号・メンデ文字・サルマナザール台湾語・タイ文字・クロッシングリバーアルファベット・天のアルファベット・マラキム・アルファベット・セマントグラフィ・地図記号・ムー語・日本海軍慣用符号・シュメール絵文字・ホボサイン・トヨクニ文字・バムン文字・チャーノフフェイス・マヤ文字・ファイストスの円盤・ビルマ文字……



 このように、「形が面白い」という共通点意外は、実にメチャクチャに収集されています。
 ページ構成は、見開きの左ページに説明文、右ページに実際の文字や記号が掲載されています。
 ぱっと開いたり、パラパラめくったり。気になった図案があれば、手を止めて説明を読む。どこを読んでも、どこまで読んでも、どこから読んでもOKという、なんというか、とても玩具的な本です。

 個人的に面白かったのが「ホボ・サイン」の項。

 ホボ・サイン
 ヨーロッパのジプシーの間で広まり、ヨーロッパ全土の放浪者(ホボ)の間で使われた仲間内の符丁。
 後から来る仲間へ、この土地の人たちの様子、危険であるかどうかなどの注意点を記号化して、道端や塀などにチョークで書いたもの。


 逆三角形のマークが「道悪し、他浮浪者多し」、猫マークが「親切な婦人が住んでいる」、十字架マークが「信心深い話をすればタダで食える」などなど、
 マークの形と意味が、微妙に絡んでいて笑えます。
 第三者にバレないための工夫なんでしょうが、かなり無理矢理です。

 さて。
 この本を出している牛若丸出版という会社は、一風変わった出版社でして、

牛若丸出版

1985年設立
グラフィックデザイナー松田行正主宰

牛若丸出版 1985年東京設立 グラフィックデザイナー松田行正主宰
牛若丸の本 「本総体としてオブジェらしい本である」ということである。
机や棚に置いてあるだけで存在感のある、手にとってみて、
開いてみて手触りとともにオブジェとしか名状しがたいもの、
本という形態を保ちながらも本を超えたと思わせるような、そんな本である。
しかも、アーティストの作品集というよりは編集が思いきりなされてい
明快な意図が流れていることが望ましい。
が、主宰人いわく、こんなに入れ込んだ本も見本を手にした途端、
デザイナーや編集者の性とでもいうのか、ワーカーホリックとでもいうのか、
興味が次回作に移り、「やはり面白いのはプロセスだ」と納得することもたびたびらしい。
http://www.matzda.co.jp/profile.html



 要するに、デザイナー集団による出版社です。
 なので、装丁は凄く凝っています。紙も良いものを使っています。判型(本の寸法)も変わっています。
 この出版社には、本好きの友達が入院した時、御見舞い品に喜ばれるような本が色々あります。


 話は変わりますが。
 昨日、心斎橋へ行く用事があったんで、数年ぶりにアメリカ村ヴィレッジ・ヴァンガードへ寄ってみたんですが……
 驚きました。欲しいと思える本が、全く無いんです。
 店に並んでる物は変わっていないので、趣向が変わってしまったのは私の方なのでしょう。
 これが歳を食うってことなのね。

 あとまあ、佐藤琢磨コーナーの近くに、鳥肌実コーナーを設置するのはどうかと思いました。
 当然のように、鳥肌コーナーの方がでかいし。