【珍書:其の3 『旅行用心集』】

2004-05-21

昨日に続き、本日も江戸版本からご紹介。

 『旅行用心集』(八隅蘆菴・文化7年(1810)発行)
 旅行のノウハウが親切丁寧に記された、江戸時代のベストセラーです。
 お伊勢参りが大ブームだった当時、売れに売れた模様。
 旅の心得から、所持品一覧。応急手当の仕方から、全国各地の名所・温泉の紹介まで、こと細かく載っており、とってもお買い得な本になっています。
 いつの時代も、How toや豆知識の本は大人気。


【傑作ページ@『旅行用心集』】

「一、殊の外(ほか)くたびれたる時、至極、熱すへ風呂へ、
   常よりも久しく入れば、くたびれ治る也。
   其節は、顔を度々洗ふべからず。
   顔を度々洗へば、逆上するものなり」

 お婆ちゃんの知恵袋。


「一、狐狸(キツネ、タヌキ)の所意とて、
   忽ち道を失ひ、或は昼を夜となし、
   或は川なき所を川となし、門なき所に門を鎖(とざす)の類、
   其抑(?)、種々様々の奇怪をなすことあらば、
   まず心を落着けて、たばこを呑むる、休むなどして、
   元来たる道を考えみるべし」

 私の曾祖父さんは、狐に化かされた事があるそうです。


「一、道中は色欲を■(不可読)して慎むべし。買女は湿毒あり。
   暑中は尤も感じ易し。怖るべき事なり。
   又、夜具にて湿を受けるものなれば、香気のものを懐中して
   是、湿邪を裂べし」

 怖るべき事なり。


「一、船に酔いたる時、大いに吐して後、渇くなり。
   その節、童子便を呑すべし。もし童子便なき時は、
   大人の尿を呑すべし。
   誤りて水をのめば、即死するなり。つつしむべし」

 ポカリスエットで勘弁してください。


「一、大小便のつまりたるをこらへて、
   馬駕(うまかご)に決して乗るべからず。
   落馬等せば心(しん)を突、頓死する事あり」

 ……。
  
 こんな死に方じゃあ、家族も泣くに泣けません。