【珍事:其の6 『死ぬかと思った。サムハラ』】

2005-03-15

 家族で車に乗って親戚の葬式へ行く途中、もらい事故にあいました。

 自動車同士が速度30キロで衝突。
 危うく自分の葬式を出すところでした。本当、シャレになりません。
 衝撃で車が横滑りし、ボンネットから勢いよく水蒸気が上がり、車内に白い煙が立ちこめ、同乗していた母が、「車が爆発するかも、早く下りなさい!」と叫ぶも、自分側のドアは鍵が壊れて開かず……さすがに焦りました。

 警察・消防・救急が来ましたね。
 車は再起不能ですが、幸い私の家族は、後部座席でもシートベルトをする習慣があったので、奇跡的に全員かすり傷程度で済みました。
 外傷は無いのですが、念のため、ムチウチ検査へ行ってきます。

 しかし……本当、シートベルトしてなかったらと思うと、血の気が引きます。
 日々、どこに危険が転がっているか分からんものですね。
 

 さて。
 事故った記念に、交通事故防止のおまじないについて。
 民間信仰で、「さむはら」もしくは「サムハラ」と書いた紙を携帯していると、交通事故に遭わないとされています。
 このおまじないは、小学校の頃に何かの本で知ったんですが、ずっと漢字は「寒原」か「作務原」だと思っていました。
 雷避けのおまじない、「クワバラ(桑原)」(※)と同じように、「サムハラ」という地名が実在して、その土地に纏わる逸話が、民間伝承のおまじないに変化したと思っていたのですが、

※「クワバラ」…参考サイト<http://www.elrosa.com/tisen/82/82592.html
 調べたところ、サムハラはと書き、「クワバラ」とは、事情が全く違うようです。
原書房の『日本呪術全書』によると、

 「サムハラ」という文字を白紙に書き、お守り袋などに携帯していると、不慮の災難…銃弾、交通事故、飛行機事故などに遭わないという。
 サムハラは古くは古代中国の生命の守護神とされ、孔子の弟子曹氏がこの神を信仰していたおかげで、生涯を無事終えることができたといわれる。

 日本では豊臣秀吉が朝鮮に出兵したとき(文禄の役)に、加藤清正が刀にこの文字を彫りつけていたために九死に一生を得たと言い、その後も徳川家治の小姓、新見愛之助が不慮の災害に遭遇したけれどもまったく怪我をせずすんだという。

 日清・日露戦争大東亜戦争のときには、「サムハラ」の護符を所持していれば絶対に弾丸に当たらないという呪いが流行ったこともあった。
 大阪市西区立売堀二にサムハラ神社がある。教祖の田中富三郎はサムハラのお守りを持っていたため、日清・日露戦争に出征し、激戦地を転戦したが、身に傷を受けることはなかった。
 旅順港二○三高知では五人の使役とともに爆風で吹き飛ばされ、仲間全員が死傷したにもかかわらず、ただ本人だけが無傷であった。
 そのために神徳を顕彰するため、同神社を建立したという。
 なお、田中によれば、祭神サムハラ大神は天御中主(あめのみなかぬし)尊、高皇産霊(たかみむすび)尊、神皇産霊(かむみむすび)尊の三神の総称であるとしている。

 平田篤胤や宮地水位らを教導したとされる神仙道系の仙人・杉山僧正は、サムハラを「剣難、鉄砲難、悪病難」を除く効能があり、「サンバ、サンバ」「シャクコウ、シャクコウ」「キンカツ、キンシン」との訓み方があるとしている(宮地水位『異境備忘録』)。

 『図説 日本呪術全書』 豊島泰国 原書房 より抜粋



 何はともあれ、後部座席でもシートベルトは締めておくべきですよ。本当。